XIII. 緩和ケア

 緩和ケアは,癌やエイズに対する終末期医療として発達してきたが,最近では,循環器疾患や呼吸器疾患など生命を脅かすすべての疾患に対して考慮
すべきものとされ,身体的のみならず,心理社会的な苦痛などの問題を早期に発見し,的確なアセスメントと対処を行うことによって,苦しみを予防し和ら
げ, QOLを改善することの必要性が世界保健機関(WHO)で提唱されている.心不全患者は,しばしば全人的苦痛を抱えており,終末期に至る前の早期
の段
階から,患者・家族のQOL改善のためにも多職種チームによるサポートが重要である.また,生命予後を改善するさまざまな医療機器が普及してきた一方
で,QOLを重視する終末期においては,医療機器の作動停止も考慮されるべき選択肢であり,これらの意思決定支援を行うことも緩和ケアの役割の1つで
ある.2014年のWHOの報告によると,緩和ケアを必要とする疾患に循環器疾患が40%近くを占めているにも関わらず884),わが国では十分に認知されて
いるとは言い難い.2016年には,厚生労働省より循環器疾患の緩和ケアの医療体制整備に取り組む方針が打ち出されており,今後,心不全に対する緩和
ケアの必要性を医療従事者に啓蒙していくことも重要であると考えられる.
1.アドバンス・ケア・プランニングと意思決定支援 2.心不全終末期の判断と緩和ケアの対象 3.チーム医療の重要性 4.末期心不全における症状と対処法 5.心不全緩和ケアの早期導入
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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