心不全における緩和ケアは,治療を諦めるものではなく,患者,家族のQOLを改善させるためのものであり,通常の心不全治療と並行して行われる.
したがって終末期に至ってから考慮するというよりも,早期の段階から導入することが望ましい.また,生命予後改善を目的とした各種医療機器が,
多くの心不全患者に植え込まれているが,とくに高齢者においては,心不全以外の要因で終末期に至る可能性についても十分に考慮し,術前に患者,
家族と医療従事者で将来の医療機器停止に関して話し合っておく必要がある.今後実施が見込まれる植込型LVADのDTにおいては,併存症やフレイル
を十分に考慮したうえで,多職種チームにより症例選択を行い,終末期に関する患者・家族への十分な説明と医療機器停止に関する意思決定支援が重
要である.高齢化社会の進行に伴い,循環器疾患領域における緩和ケアの重要性はますます高まるものと考えられ,緩和ケア診療の普及と質の均霑化
に向けた取り組みが求められる.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)