推奨
クラス
エビデンス
レベル
Minds
推奨
グレード
Minds
エビデンス
分類
意思決定能力が低下する前
に,あらかじめ患者や家族
と治療や療養について対話
するプロセスであるACPの
実施
I B B II
心不全や合併症に対する治
療の継続と,それらに伴う
症状の緩和
I C B II
多職種チームによる患者の
身体的,心理的,精神的な
要求に対する頻回の評価
過去の癌の
医療モデル積極的治療
病態改善のための治療
症状緩和のための治療
緩和
ケア
積極的治療
緩和ケア
積極的治療
緩和ケア
診断死亡
遺族ケア
遺族ケア
現在の癌の
医療モデル
心不全の
医療モデル
進行性の身体的・精神的機能低下を認め,日常生活のほとんど
に介助を要する
・適切な薬物・非薬物治療を行っているにもかかわらず,QOLの
著しい低下を伴う重症心不全
・適切な治療にもかかわらず,頻回の入院あるいは重篤な悪化を
繰り返す
・心移植や補助人工心臓の適応がない
・心臓悪液質
・臨床的に終末期に近いと判断される
死亡
時間
体調やADL 体調やADL
慢性心不全
死亡
時間
 心不全の末期状態(end-stage)は,「最大の薬物治療や非薬物治療を施しても治療困難な状態」とされ,終末期(end-of-life)は,「繰り返す病像の悪
化あるいは急激な増悪から,死が間近にせまり,治療の可能性のない状態」を指す890).しかし,慢性心不全においては,癌とは異なる病みの軌跡を辿
り,急性増悪による入退院を繰り返しながら,最期は急速に悪化するため,終末期の判断がしばしば困難である(図16)891).2013年のACC/AHAガイド
ラインでは,末期心不全をステージD(end-stage HF)と表記し,「非常に難治性の心不全で,補助循環,除水,持続的強心剤点滴投与,心移植,革新的
な外科的治療,またはホスピスケアなどが必要な状態」と定義している892).2016年のESCガイドラインでは,終末期ケア(end-of-life care)を要する症例
として,「進行性の身体的・精神的機能低下を認め,日常生活のほとんどに介助を要し,適切な薬物・非薬物療法を行っているにもかかわらず,QOLの著
しい低下を伴い,頻回の入院あるいは重篤な悪化を繰り返しながらも,心移植や補助人工心臓の適応がなく,心臓悪液質を認めるなど臨床的に終末期
に近いと判断される場合」と定めている(表79)14).わが国においては,2010年日本循環器学会は「循環器疾患における末期医療に関する提言」を発表
し,心不全末期状態として

1) 適切な治療を行っても
2) 慢性的な心不全症状を訴え,点滴薬物療法が頻回に必要
3) 6ヵ月に1回以上の入院や低LVEF
4) 終末期が近いと判断される

の項目をあげ定義している893).いずれの定義においても,心不全に対する適切な治療が行われていることが前提となり,積極的な治療が終末期には行
われない癌などとは異なり,症状を緩和するためには最期まで心不全や合併症に対する治療の継続が必要になる.さらに,緩和医療と終末期医療は同
義ではなく,緩和ケアは終末期から始まるものではない(図17)894).心不全が症候性となった早期の段階から実践すべきであり,早期の段階からACP
を実施し,また多職種チームによる患者の身体的,心理的,精神的なニーズを頻回に評価することが重要である(表80)
2.心不全終末期の判断と緩和ケアの対象
図16 慢性心不全と癌の終末期に至る経過の比較
慢性心不全は,癌とは異なる病みの軌跡を辿り,急性増悪による入
退院を繰り返しながら,最期は急速に悪化するため,終末期の判断
がしばしば困難である.
(Lynn J. 2001 891)より改変)
表79 緩和ケアが必要とされる終末期心不全
(2016 ESC ガイドライン)
(Ponikowski P, et al. 2016 14) より)
図17 心不全における緩和ケアのあり方
緩和ケアは終末期医療と同義ではなく,心不全が症候性となった早
期の段階から実践し,心不全の治療に関しては最期まで継続される.
(Gibbs JS, et al. 2002 894)より改変)
表80 終末期心不全における緩和ケアの推奨と
エビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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