利尿薬と同様,血管拡張薬(硝酸薬,カルペリチドなど)も,急性心原性肺水腫に有効である.一般的には,血管拡張薬が第一選択であるが,
慢性心不全の急性増悪のように体液貯留によるうっ血が著明の場合には利尿薬主体の治療を行う.一方,血圧高値,心筋虚血を合併する患者,
僧帽弁逆流症がある患者などは血管拡張薬が望ましい場合があり,個々の患者の病態生理に応じた薬剤の選択が重要である.ただし,左室収縮障害
を伴う急性心不全の治療において,カルシウム拮抗薬の使用は推奨されない.わが国では硝酸薬の使用頻度が比較的少なく,カルペリチドの使用頻度
が高いのが特徴であるが581),収縮期血圧90 mmHg未満の心原性ショック患者に対する血管拡張薬の使用は控えるべきである.また,過度の血圧低
下は腎機能悪化を招くことがあるため,用量に注意し,投与後の経過観察も重要である.とくに,腎機能障害例や高齢者では血圧の低下に注意を要し,
大動脈弁狭窄合併例では著明な血圧低下をきたす場合がある.
4.3血管拡張薬
4.3.1 硝酸薬 4.3.2 ニコランジル 4.3.3 カルペリチド
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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