ニトログリセリンや硝酸イソソルビドの舌下やスプレーおよび静注投与が,急性心不全や慢性心不全急性増悪時の肺うっ血の軽減に有効であることは旧
ガイドライン,およびACC/AHAガイドラインにも提示されている(表58).
ニトログリセリン,硝酸イソソルビドなどの硝酸薬は一酸化窒素を介して血管平滑筋細胞内のグアニル酸シクラーゼを刺激し,低用量では静脈系容量血管
を,高用量では動脈系抵抗血管も拡張し,前負荷軽減効果(肺毛細管圧低下)および後負荷軽減効果(末梢血管抵抗低下に伴う心拍出量の軽度上昇)を
発現する.また,冠動脈拡張作用により虚血性心疾患を原因疾患とする急性心不全に汎用される.心臓救急の場で重症肺水腫患者を対象に実施された高
用量硝酸薬静注反復投与+低用量フロセミド投与の併用と,高用量フロセミド投与+低用量硝酸薬持続静注の併用の比較試験では,前者のほうが人工
呼吸管理導入の頻度が低く,急性心筋梗塞発症の頻度も低かったことから721),硝酸薬のほうが有益であると解釈される.
硝酸薬の副作用として,血圧低下と肺内シャント増加に由来する動脈血酸素飽和度の低下があげられる.また,静注投与に伴って早期から耐性が発現す
るため注意が必要である.
表58 急性心不全に使用する薬剤の推奨とエビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)