a. 急性心筋梗塞に伴う心不全
急性心筋梗塞による急性心不全の原因は急激な心ポンプ機能失調である.そのため,酸素および血管拡張薬の投与などの急性心不全に対する治療も
い,可能なかぎり早期にPCIや冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting; CABG),血栓溶解療法など適切な再灌流療法を施行して心筋虚血
を解除し,急性期より左室リモデリング抑制を考慮した追加療法を行う.必要に応じて大動脈内バルーンポンプ(intra-aortic balloon pump; IABP)などの
ためには急性期からのACE阻害薬の投与を352),また血行動態が安定した早期よりβ遮断薬の投与を開始する353).不整脈治療,機械的合併症や虚血性
b. 虚血性心不全の急性増悪
虚血性心不全患者では冠動脈病変の進展のみならず,冠攣縮や消化管出血などによる貧血,発作性心房細動による頻脈,もしくは過剰な日常活動の
結果,心筋での酸素の供給と需要のバランスが崩れ,心筋虚血(心内膜下虚血)が出現し,急激な拡張障害および収縮障害による急性心不全が発症す
る354).とくに糖尿病や高血圧に心肥大を併存する患者では心内膜下虚血が生じやすく355),急激な拡張障害による電撃的な肺水腫をきたすため注意が必
要であり356),必要に応じて適切にPCIまたはCABGにより血行再建を行う.また,慢性的な心筋虚血による収縮機能低下(心筋ハイバネーション)が存在
する場合も357),PCIまたはCABGの適応を考慮する.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)