ニトログリセリンや硝酸イソソルビドの舌下やスプレーおよび静注投与は,急性心不全や慢性心不全急性増悪時の肺うっ血の軽減に有効である
(表58).硝酸薬は,低用量では静脈系容量血管を,高用量では動脈系抵抗血管も拡張し,前負荷軽減効果(肺毛細管圧低下)および後負荷軽減効果
(末梢血管抵抗低下に伴う心拍出量の軽度上昇)を発現する.また,冠動脈拡張作用により虚血性心疾患を原因疾患とする急性心不全に汎用される.

 硝酸薬の副作用として,血圧低下と肺内シャント増加に由来する動脈血酸素飽和度の低下があげられる.また,静注投与に伴って早期から耐性が発現
するため注意が必要である.
4.3.1 硝酸薬
推奨クラス エビデンスレベル
Minds推奨グレード Mindsエビデンス分類
強心薬・昇圧薬
ドブタミン
ポンプ失調を有する肺うっ血
患者への投与Ⅱa C B II
ドパミン
尿量増加や腎保護効果を期待
しての投与Ⅱb A C2 II
ノルアドレナリン
肺うっ血と同時に低血圧を呈
する患者へのカテコラミン製
剤との併用投与
Ⅱa B B III
PDEIII阻害薬
非虚血性のポンプ失調と肺
うっ血に対する投与Ⅱa A B II
虚血性のポンプ失調と肺うっ
血に対する投与Ⅱb A B II
心拍出量の高度低下に対して
のドブタミンとの併用投与Ⅱb C C1 IVb
心拍数調節薬
ジギタリス
頻脈誘発性心不全における心
房細動の心拍数コントロール
目的での投与
I A B II
ランジオロール
頻脈誘発性心不全における心
房細動の心拍数コントロール
目的での投与
I C B II
推奨クラス エビデンスレベル
Minds推奨グレード Mindsエビデンス分類
利尿薬
ループ利尿薬
急性心不全における体液貯留
に対する静注および経口投与I C B II
1回静注に抵抗性のある場合
の持続静脈内投与Ⅱa B B IVb
バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)
ループ利尿薬をはじめとする
他の利尿薬で効果不十分な場
合の体液貯留に対しての投与
(高ナトリウム血症を除く)
Ⅱa A B II
低ナトリウム血症を伴う体液
貯留に対しての投与Ⅱa C C1 II
MRA
ループ利尿薬による利尿効果
減弱の場合の併用投与Ⅱb C C1 III
腎機能が保たれた低カリウム
血症合併例に対する投与Ⅱa B B II
腎機能障害,高カリウム血症
合併例に対する投与Ⅲ C D VI
サイアザイド系利尿薬
フロセミドによる利尿効果減
弱の場合の併用投与Ⅱb C C1 III
血管拡張薬
硝酸薬
急性心不全や慢性心不全の
急性増悪時の肺うっ血に対す
る投与
I B A II
ニコランジル
急性心不全や慢性心不全の
急性増悪時の肺うっ血に対す
る投与
Ⅱb C C1 II
カルペリチド
非代償性心不全患者での
肺うっ血に対する投与Ⅱa B B II
難治性心不全患者での強心薬
との併用投与Ⅱa B C1 II
重篤な低血圧,心原性ショッ
ク,急性右室梗塞,脱水症患
者に対する投与
Ⅲ C C2 VI
カルシウム拮抗薬
高血圧緊急症に対するニフェ
ジピンの舌下投与Ⅲ C D IVb
表58 急性心不全に使用する薬剤の推奨とエビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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