a. フロセミド
ループ利尿薬は肺うっ血や浮腫などの心不全症状を軽減し,前負荷を減じて左室拡張末期圧を低下する.急性心不全患者において,その効果は即効
性である465).欧米のガイドライン7, 16)においても,症候性左室収縮性心不全に対し利尿薬の投与が推奨されている.わが国における観察研究から,
できるだけうっ血時間を短くし,早期に治療することが重要と考えられる466).
とくに,重症心不全の腎機能障害合併例の治療には通常より高用量を必要とする467).1回静注投与で満足な利尿効果が得られない場合には,むしろ
持続静注のほうが有効な場合もある468).
ループ利尿薬の投与量は必要最小限とすべきである.また,ボーラス投与群と持続点滴群の投与法についても,症例に合わせて最適な方法をとるべき
と考えられる.LVEFの違いなど病態に合わせた投与量の検討も必要である.
ループ利尿薬は,低血圧(収縮期血圧90 mmHg未満),低ナトリウム血症,低アルブミン血症,アシドーシスを合併している患者では反応が不良とな
る.ループ利尿薬による利尿効果減弱の場合には,作用部位の異なる利尿薬の併用が有効な場合がある.ただし,電解質異常,血中尿素窒素の上昇を
きたす頻度が高いので注意を要する.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)