過去に行われた大規模臨床試験により,ビソプロロール,metoprolol succinate,α1受容体遮断作用を併せもつカルベジロールの生命予後改善効果
が明らかにされた192- 195).一方,心不全症状のない左室機能不全患者に対するβ遮断薬のエビデンスも得られている.
β遮断薬の投与に際しては,NYHA心機能分類III度以上の心不全患者は原則として入院とし,体液貯留の兆候がなく,患者の状態が安定していること
を確認したうえで,ごく少量より時間をかけて数日~2週間ごとに段階的に増量していくことが望ましい.β遮断薬の開始にあたっては,投与禁忌となる合
併疾患がないことを確認する.増量に際しては自覚症状,脈拍,血圧,心胸比,および心エコー図による心内腔の大きさなどを参考にし,心不全の
増悪,過度の低血圧や徐脈の出現に注意する.
β遮断薬開始のタイミングは心不全急性増悪からの回復期で,入院中が望ましい196).初期用量を開始し,以後外来で増量する.また,β遮断薬治療
中に心不全増悪をきたした場合,β 遮断薬はなるべく継続したほうが良いが,心不全の程度によってはβ 遮断薬を中止せざるを得ない場合もある.
病態が安定したら入院中には可能なかぎり再開する197).
慢性心不全における大規模試験のエビデンスのあるβ遮断薬はカルベジロール,ビソプロロール,metoprolol succinateであるが,このうちカルベジ
ロールとビソプロロールがわが国では保険適用となっている.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)