心不全症例におけるACE阻害薬とARBの有効性も確立されている.CONSENSUS 182)では血清クレアチニン値3.4 mg/dL以上を除外しているが,対象
症例の平均血清クレアチニン値は1.4 mg/dLであり,平均eGFRもおよそ45mL/分/1.73m2と多くのCKD症例を含んでいる.血清クレアチニン値の平均値の
上下で2群に分けて検討したサブ解析によると,エナラプリルの効果は血清クレアチニン高値例でも低値例と同等であった.血清クレアチニン値2.4mg/dL
以上もしくはクレアチニンクリアランス30 mL/分未満のCKDステージ4~5 にあたる心不全患者を対象にした研究においても,RA系抑制薬の投与で有意に
予後が改善した398).また,β遮断薬を内服している透析症例において,RA系抑制薬内服群では非内服群に比して予後が改善したとの報告がある397).
ACE阻害薬やARBは,CKDステージ4~5 の症例や高齢者CKD症例では,まれに投与開始時に急速に腎機能が悪化したり,高カリウム血症に陥ったり
する危険性があるため,初期量は少量から開始する399).
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)