1997年にDIG試験の結果が発表され,ジゴキシンは洞調律心不全患者の心不全増悪による入院を減らすが予後は改善しないことが明らかとなっ
たが288),不整脈に関連した死亡をむしろ増加させる傾向にあった.DIGのサブスタディーではジゴキシン血中濃度に比例して死亡率が増加すること
が明らかにされており,LVEF 45%以下の洞調律の心不全患者の至適血中濃度として,0.5~0.8 ng/mLが提案されている289).ジゴキシンは女性
心不全患者においてはむしろ予後を悪化させるというエビデンスも得られているので290),これらの患者群における使用は注意を要する.

 一方,心房細動を伴う心不全患者においては,心拍数をコントロールし,十分な左室充満時間を得るためにジギタリスが用いられる.これは臨床症
状の改善を目的とするものであって,心房細動を伴う左室収縮機能不全患者においてジギタリスが予後を改善するかどうかに関するエビデンスはな
い.後ろ向き解析ではあるが,ジゴキシンの使用は心不全の有無を問わず心房細動患者の予後不良に寄与したとの報告もある291).また,左室収縮
機能低下に基づく心不全患者の心房細動のレートコントロールにジギタリスが最適であるかどうかについても,エビデンスは得られていない.

 ジゴキシン以外のジギタリス製剤が心不全のコントロールにおいてジゴキシンよりも優れているという明らかなエビデンスは得られていない.
1.1.8 ジギタリス
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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