1980年代から行われた種々の経口強心薬の大規模臨床試験は,ことごとく否定的な結果に終わり292, 293),米国では経口強心薬について否定的な
見方がなされている.しかしながら,生命予後の改善効果のみが慢性心不全治療の最終目的ではないとの見解にたてば,経口強心薬の臨床的有用
性についても再考慮すべきであろう.とくに,重症例におけるQOLの改善294, 295)を目的とする場合や,静注強心薬からの離脱時,またはβ遮断薬導入
時の使用はその有用性に検討の余地がある296).わが国におけるNYHA心機能分類IImまたはIII度の心不全患者を対象としたピモベンダンの臨床試
験,EPOCHでは,52週間の試験期間中,ピモベンダン群でプラセボ群に比較して複合エンドポイントが大きく減少し,Specific Activity Scaleで評価し
た身体活動能力は改善した297).経口強心薬として現在わが国ではピモベンダン,デノパミン,ドカルパミンが認可されている.
1.1.9 経口強心薬
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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