薬剤* 用法・用量
ACE 阻害薬
エナラプリル2.5 mg/日より開始,維持量5~10 mg/日
1日1回投与
リシノプリル5 mg/日より開始,維持量5~10 mg/日
1日1回投与
ARB
カンデサルタン
4 mg/日より開始(重症例・腎障害では
2 mg/日)
維持量4~8 mg/日(最大量12 mg/日)
1日1回投与
MRA
スピロノラクトン12.5~25 mg/日より開始,維持量25~50
mg/日1日1回投与
エプレレノン25 mg/日より開始,維持量50 mg/日
1日1回投与
β遮断薬
カルベジロール2.5 mg/日より開始** 維持量5~20 mg/日
1日2回投与
ビソプロロール0.625 mg/日より開始**,維持量1.25~ 5
mg/日1日1回投与
利尿薬
フロセミド40~80 mg/日1日1回投与
アゾセミド60 mg/日1日1回投与
トラセミド4~8 mg/日1日1回投与
トルバプタン7.5~15 mg/日1日1回投与
トリクロルメチア
ジド2~8 mg/日1日1回投与
抗不整脈薬
アミオダロン400 mg/日より開始,維持量200 mg/日
1日1~2回投与
ジギタリス
ジゴキシン0.125~0.25 mg/日1日1回投与
経口強心薬
ピモベンダン2.5~5.0 mg/日1日1回投与
推奨クラス I
ACE阻害薬:禁忌を除くすべての患者に対する投与(無症状の患
者も含む)
ARB:ACE阻害薬に忍容性のない患者に対する投与
β遮断薬:有症状の患者に対する予後の改善を目的とした投与
MRA:ループ利尿薬,ACE阻害薬がすでに投与されている
NYHA心機能分類II度以上,LVEF<35%の患者に対する投与
ループ利尿薬,サイアザイド系利尿薬:うっ血に基づく症状を有
する患者に対する投与
推奨クラス IIa
β遮断薬:無症状の左室収縮機能不全患者における投与
β遮断薬またはジギタリス:頻脈性心房細動を有する患者への
レートコントロールを目的とした投与
バソプレシン受容体拮抗薬:ループ利尿薬をはじめとする他の利
尿薬で効果不十分な場合に心不全における体液貯留に基づく症状
の改善を目的として入院中に投与開始
ジギタリス(血中濃度0.8 ng/mL以下に維持):洞調律の患者に
対する投与
経口強心薬:QOLの改善,経静脈的強心薬からの離脱を目的に
短期投与
アミオダロン:重症心室不整脈とそれに基づく心停止の既往のあ
る患者における投与
推奨クラス IIb
ARB:ACE阻害薬との併用
硝酸イソソルビドとヒドララジンの併用:ACE阻害薬,あるいは
ARBの代用としての投与
経口強心薬:β遮断薬導入時の併用
炭酸脱水酵素阻害薬・浸透圧利尿薬など:ループ利尿薬,サイア
ザイド系利尿薬,MRA以外の利尿薬
推奨クラス III
経口強心薬:無症状の患者に対する長期投与
カルシウム拮抗薬:狭心症,高血圧を合併していない患者に対す
る投与
Vaughan Williams分類Ⅰ群抗不整脈薬の長期経口投与
α遮断薬の投与307)
1.LVEFの低下した心不全(HFrEF)
(表23,24,25)
収縮機能障害による心不全(HFrEF)の原因は,非虚血性の拡張型心筋症といわゆる虚血性心筋症に大別できる.これらの疾患においては交感神
経系,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系が賦活化され,進行性の左室拡大と収縮性の低下,すなわちリモデリングが生じ,死亡,心
不全の悪化などのイベントにつながると考えられている.したがって,このような神経内分泌系を阻害することにより左室リモデリングを抑制し,心不全
の予後を改善することが最近の慢性心不全治療の中心となっている.ここではこのような傾向をふまえたうえで,わが国の事情に即した薬物治療のガ
イドラインを提供することを目標とした.
アミオダロン以外の抗不整脈薬については他の項(IX.併存症の病態と治療 2. 心室不整脈[p. 57])を,また慢性心不全の急性増悪時の治療に
ついては,X. 急性心不全 4.薬物治療(p. 83)を参照されたい.
表23 HFrEF における治療薬の推奨とエビデンスレベル
表24 HFrEF における推奨クラスごとの治療薬
表25 HFrEF の薬物治療:薬剤名と用法・用量
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)