欧米のガイドラインでは,種々の原因によりACE阻害薬を用いることのできない患者において生命予後の改善を目的として硝酸イソソルビドとヒドララ
ジンの併用が推奨されている284, 285).しかし,これはジギタリス薬と利尿薬のみが投与された心不全患者を対象とした小規模かつ古いデータに基づく
ものである.ACE阻害薬・β遮断薬・MRAが投与されたNYHA心機能分類III ~ IV度のアフリカ系アメリカ人においても有用性を示した研究成果はある
が286),わが国では積極的には使用されていない.硝酸薬単独の使用では,急性期血行動態の改善は期待できるが,予後改善効果については不明
である.
一般にカルシウム拮抗薬は,長期に用いると心不全を悪化させる危険性があり,すすめられない.血管選択性の高いジヒドロピリジン系カルシウム
拮抗薬は,このような有害事象が少ないとされるが,長期予後を改善するとのコンセンサスは得られていない287).非ジヒドロピリジン系カルシウム拮
抗薬は陰性変力作用を有し,収縮不全による心不全には禁忌である.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)