ヒトではアンジオテンシンIからIIへの変換のかなりの部分はACE系ではなく,キマーゼ系によるものであると考えられている.したがって,
アンジオテンシンIIの作用をより確実にブロックする薬剤として,ARBが心不全治療に試みられるようになった.これまでに行われた大規模臨床
試験の結果241- 243)より,ARBは左室収縮機能低下に基づく慢性心不全患者においてACE阻害薬と同等の心血管イベント抑制効果を有する.
したがってACE阻害薬が忍容性などの点で投与できない場合にはARBを用いるべきである.ただし,腎機能に及ぼす影響や高カリウム血症,
低血圧などについてはACE阻害薬と同様の注意が必要である.また,わが国での投与量が欧米にくらべて低用量である点は,ACE阻害薬と同様で
ある.ACE阻害薬とARBの併用について付加的な有効性は確認されていない.またACE阻害薬,ARB,β遮断薬の3剤併用についてはVal-HeFTで
は否定的な結果であったが244),その後のCHARM-addedでは肯定的な結果となり245),いまだ一定の見解が得られていない.わが国で行われた
SUPPORT試験では,高血圧を合併した心不全患者で上記の3剤併用は臨床転帰を改善せず,腎機能を悪化させると報告されている246)
1.1.2 アンジオテンシンII 受容体拮抗薬(ARB)
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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