このクラスの薬剤の左心機能不全に基づく心不全患者の生命予後,および種々の心血管イベントに対する効果はCONSENSUS 236),SOLVD 237,
238)などの大規模臨床試験により確立されている.無症候の左室収縮機能不全についても,心不全の入院を抑制し,生命予後を改善することがその
後の長期経過観察で明らかになっているので239),すべての左室収縮機能低下患者に用いられるべきである.また高用量と低用量を比較した場合,
死亡率には差がないものの,死亡または入院に関しては高用量でより効果が得られるとの ATLAS試験の結果もあることから240),薬剤の忍容性が
あるかぎり(咳嗽の有無,血圧,血清クレアチニン値,血清カリウム値のチェック),増量を試みる.他の心血管系治療薬と同じく,わが国ではACE阻
害薬の投与量も低用量である(表25[p. 41]).
薬剤* 用法・用量
ACE 阻害薬
エナラプリル2.5 mg/日より開始,維持量5~10 mg/日
1日1回投与
リシノプリル5 mg/日より開始,維持量5~10 mg/日
1日1回投与
ARB
カンデサルタン
4 mg/日より開始(重症例・腎障害では
2 mg/日)
維持量4~8 mg/日(最大量12 mg/日)
1日1回投与
MRA
スピロノラクトン12.5~25 mg/日より開始,維持量25~50
mg/日1日1回投与
エプレレノン25 mg/日より開始,維持量50 mg/日
1日1回投与
β遮断薬
カルベジロール2.5 mg/日より開始** 維持量5~20 mg/日
1日2回投与
ビソプロロール0.625 mg/日より開始**,維持量1.25~ 5
mg/日1日1回投与
利尿薬
フロセミド40~80 mg/日1日1回投与
アゾセミド60 mg/日1日1回投与
トラセミド4~8 mg/日1日1回投与
トルバプタン7.5~15 mg/日1日1回投与
トリクロルメチア
ジド2~8 mg/日1日1回投与
抗不整脈薬
アミオダロン400 mg/日より開始,維持量200 mg/日
1日1~2回投与
ジギタリス
ジゴキシン0.125~0.25 mg/日1日1回投与
経口強心薬
ピモベンダン2.5~5.0 mg/日1日1回投与
表25 HFrEF の薬物治療:薬剤名と用法・用量
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)