肥満や糖尿病は心不全の発症に関連し216- 219),インスリン抵抗性を基盤とした糖尿病やメタボリックシンドロームはいずれも心血管疾患の主要な危
険因子であることから,減量や運動療法などの一般的な生活習慣の改善に加えて薬物治療による包括的なリスク管理を行う220).一般に心不全の発
症リスクは,身体活動強度と負の相関221, 222),BMIと正の相関があり223),その傾向はHFrEFよりHFpEFの発症のほうが顕著である224)

 従来の糖尿病治療薬は,心不全に対する予防効果を示すエビデンスは乏しかったが,EMPA-REG OUTCOME試験においてナトリウム・グルコース
共輸送体2(sodiumglucose cotransporter 2; SGLT2)阻害薬であるエンパグリフロジンは,心血管病既往のある2型糖尿病患者の心不全入院および
心不全死を抑制し,さらに心不全の既往のない患者群に対しても心不全入院を抑制した225- 227).同様に,カナグリフロジンを用いたCANVAS試験にお
いても,心血管高リスク2型糖尿病(全体の34%が心血管高リスク一次予防症例で,66%が心血管病既往例)の心不全入院を低下させた228)
さらに,SGLT2阻害薬による治療を受けた2型糖尿病患者(全体の87%が一次予防症例)に対するコホート研究であるCVD-REAL Studyにおいても,
SGLT2阻害薬は心不全入院,および心血管死を低下させた229, 230).以上より,SGLT2阻害薬は心血管病既往のある2型糖尿病患者の心不全予防に
有効であるが,一次予防症例や後期高齢者などでの有効性については今後の課題である.
3.肥満・糖尿病
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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