冠動脈疾患患者には,心不全を含めた心血管イベントの発症抑制と生命予後改善のため,ACE阻害薬を投与する200).心筋梗塞後の二次予防にお
いても,心不全の発症予防のためにACE阻害薬201-203),β遮断薬204),スタチン205-207),ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid
receptor antagonist; MRA)208- 210)を投与する211).なおARBは,ACE阻害薬に忍容性がない例で,とくに左室機能障害のある例に投与する212, 213)
また,JCAD研究214)において,有意な冠動脈狭窄を有し,ニコランジルを投与されていた患者群において,心臓死や心筋梗塞などとともに心不全発症
が低率であったと報告されている.

 経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)による心不全予防効果に関しては,OAT研究215)において,LVEF
50%未満の急性心筋梗塞患者に対して発症3日以降28日以内に完全閉塞の梗塞責任血管にPCIを実施しても,その後4年間に心不全を含む心
事故防止効果は認められなかった.
2.冠動脈疾患
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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