近年の心臓植込み型デバイス(ICDやCRT-P・CRT-Dなど)には,不整脈イベントやデバイス機器の情報などを転送する遠隔モニタリング機能が備えられてい
る.遠隔モニタリングによるデータの精度は高く,リードやバッテリーをはじめとするデバイスの不具合,心房細動を含む不整脈の検出および治療内容の
確認などが,従来の対面診療にくらべて早期に可能となっている402-406).さらに,遠隔モニタリングを採用することによる外来の臨時受診の削減407),
入院期間の短縮408),および生命予後改善効果も報告されている409).ICD/CRT-P・CRT-Dの遠隔モニタリングを使用した心不全管理については,
ICD/CRT-D植込みを行った心不全患者664人を対象としたIN-TIMEにおいて410),遠隔モニタリングによる心不全管理にて全死亡が有意に減少した.
一方,デバイスの遠隔モニタリングにて,心不全患者の予後は改善しないとの報告もあり411, 412),介入方法を含め,検討が必要である.また,心臓植込
みデバイスのモニタリング機能の有用性についても報告されている.胸郭インピーダンスは,肺動脈楔入圧と相関することが報告されたが413),SENSE-
HF 414)やDOT-HF 415)では心不全悪化の感度および陽性適中率が低いことや,アラートによる心不全の管理によっても心不全入院および死亡の早期検
出は統計学的に有意ではなかったことなどから,胸郭インピーダンスのモニタリングのみによる心不全の診断精度には限界があると考えられている.
近年では,さまざまなパラメータを組み合わせた心不全統合指標の有用性が報告されているが416),より多くの症例での検討が必要である.また,
わが国での遠隔モニタリングの運用については,多くの病院でいまだ整備されていない状態であり,遠隔モニタリングから得られたデータを活用した医療
については,今後の課題である.
表30 植込み型デバイスの遠隔モニタリングの推奨とエビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)