非代償性心不全,急性増悪時には運動は禁忌であり,活動制限と安静が必要である.しかし、安定した慢性心不全では過度な安静によるデコンディショ
ニングは運動耐容能の低下を引き起こし,労作時の易疲労感や呼吸困難などの症状を悪化させる要因となる.また,高齢患者においては,加齢による退
行性変化および廃用性変化により,日常生活動作(activity of daily living; ADL)が低下する.とくに,下肢筋力やバランス機能の低下が著しいため858)
歩行や階段昇降など移動動作が制限されやすく,容易に転倒し,排泄行動や家事,社会活動など,患者の日常生活全般に影響を及ぼす.したがって,
ADLの評価は重要であり,自立歩行,階段昇降といった身体活動の評価とともに,排泄行動,入浴,食行動,家事などの日常生活動作能力を評価する.
適度な運動は,運動耐容能を増して日常生活中の症状を改善し,QOLを高めることが明らかとなっており441, 458),ADLの維持,拡大にも有効である.
運動療法の詳細については,VII. 非薬物治療 4. 運動療法(p. 50)と,本章 2.包括的心臓リハビリテーション(p. 108),および心血管疾患における
リハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)191)を参照されたい.
1.2.9 身体活動
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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