教育内容具体的な教育・支援方法
アルコール
・ 過度のアルコール摂取の危険性
・ 心不全の病因を含め個別性を
考慮し,飲酒量に関する助言
を行う.
禁煙
・ 禁煙の必要性 ・「 禁煙ガイドライン2010年改
訂版」を参照.
身体活動
・ 安定期の適切な身体活動の必
要性
・ 症状悪化時の安静,活動制限
の必要性
・ 過度な安静による弊害(運動耐
容能の低下など)
・ 運動耐容能,骨格筋を評価する.
・ 定期的に日常生活動作を評価
する.
・ 身体機能とともに生活環境を
考慮したうえで,転倒リスク
などを評価し,日常生活上の
身体活動の留意点を具体的に
指導する.
入浴
・ 適切な入浴方法 ・ 重症度や生活環境に応じた方
法を指導する.
旅行
・ 旅行中の注意事項(服薬,飲水
量,食事内容,身体活動量)
・ 旅行に伴う心不全増悪の危険性
・ 旅行中の急性増悪時の対処方法
・ 旅行時の食事内容や食事時間
の変化,気候の変化,運動量
の変化などが心不全に及ぼす
影響を説明する.
・ 旅行前の準備に関する情報提
供を行う.
性生活
・ 性行為が心不全に及ぼす影響
・ 心不全治療薬と性機能の関係
・ 勃起障害治療薬の服用について
・ 性行為により心不全悪化の可
能性があることを説明する.
・ 必要時,専門家を紹介する.
心理的支援
・ 心不全と心理精神的変化
・ 日常生活におけるストレスマ
ネジメント
・ 継続的に精神症状を評価する.
・ 日常生活におけるストレスマ
ネジメントの必要性とその方
法について説明する.
・ 精神症状の悪化が疑われる場
合は,精神科医,心療内科医,
臨床心理士へのコンサルテー
ションを実施する.
定期的な受診
・ 定期的な受診の必要性
・ 退院前に退院後の受診日程を
確認する.
・ 症状増悪時は,受診予定にか
かわらず,すみやかに医療機
関に連絡することを説明する.
・ 医療者へのアクセスを簡便に
する.(電話相談,社会的資源
の活用)
教育内容具体的な教育・支援方法
心不全に関する知識
・ 定義,原因,症状,病の軌跡
・ 重症度の評価(検査内容)
・ 増悪の誘因
・ 合併疾患
・ 薬物治療,非薬物治療
・ 理解度やヘルスリテラシーを
考慮し,教育資材などを用い,
知識を提供する.
セルフモニタリング
・ 患者自身が症状モニタリング
を実施することの必要性・重
要性
・ セルフモニタリングのスキル
・ 患者手帳の活用
・ 患者手帳への記録を促すとと
もに,医療者は記録された情
報を診療,患者教育に活用す
る.
増悪時の対応
・ 増悪時の症状と評価
・ 増悪時の医療者への連絡方法
・ 呼吸困難,浮腫,3日間で2
kg以上の体重増加など増悪の
徴候を認めた場合の医療機関
への受診の必要性と,具体的
な方法を説明する.
治療に対するアドヒアランス
・ 薬剤名,薬効,服薬方法,副
作用
・ 処方通りに服用することの重
要性
・ デバイス治療の目的,治療に
関する生活上の注意事項
・ 理解度やヘルスリテラシーを
考慮し,教育資材などを用い
て知識を提供する.
・ 定期的にアドヒアランスを評
価する.
・ アドヒアランスが欠如してい
る場合は,医療者による教育,
支援を行う.
感染予防とワクチン接種
・ 心不全増悪因子としての感染症
・ インフルエンザ,肺炎に対す
るワクチン接種の必要性
・ 日常生活上の感染予防に関す
る知識を提供する.
・ 予防接種の実施時期に関する
情報を提供する.
塩分・水分管理
・ 過度の飲水の危険性
・ 重症心不全患者における飲水
制限
・ 適正な塩分摂取(6 g未満/日)
・ 適正体重の維持の重要性
・ 飲水量の計測方法について具
体的に説明する.
・ 効果的な減塩方法について,
教材などを用いて説明する.
・ 減塩による食欲低下などの症
状を観察する.
栄養管理
・ バランスのよい食事の必要性
・ 合併疾患を考慮した食事内容
・ 定期的に栄養状態を観察する.
・ 嚥下機能などの身体機能や生
活状況に応じた栄養指導に努
める.
・ 食事量の減少や食欲低下は,
心不全増悪の徴候の可能性が
あることを説明する.
推奨
クラス
エビデンス
レベル
Minds
推奨
グレード
Minds
エビデンス
分類
多職種によるチームアプ
ローチを用いたアドヒアラ
ンスおよびセルフケアを向
上させるための教育,支援:
患者および家族,介護者に
対して
I A A I
退院支援と継続的フォロー
アップI A B I
禁煙I C B IVb
症状モニタリングI C C1 VI
精神症状のモニタリングと
専門的治療I B B II
心不全増悪の高リスク患者
への教育支援と社会資源の
活用:独居者,高齢者,認知症
合併者などに対して
I A A I
1日6 g程度の減塩食Ⅱa C C1 VI
節酒Ⅱa C C1 VI
感染症予防のためのワクチン
接種
特徴
・多職種によるチームアプローチ(循環器医,心臓血管外
科医,看護師,薬剤師,理学療法士,栄養士,ソーシャ
ルワーカー,心理士など)
・専門的な教育を受けた医療従事者による患者教育,相談
支援
・包括的心臓リハビリテーションによるプログラムの実施
構成
要素
・薬物治療,非薬物治療
・運動療法
・アドヒアランスとセルフケアを重視した患者教育
・患者,家族,介護者あるいは医療従事者による症状モニ
タリング
・退院調整・退院支援,社会資源の活用
・退院後のフォローアップ
・継続的な身体・精神・社会的機能の評価
(体重,栄養状態,検査所見の結果,ADL,精神状態,
QOLの変化など)
・患者,家族および介護者に対する心理的サポートの提供
1.プログラム(教育など)とチーム医療(表73,74,75)
表73 心不全患者の疾病管理プログラムの特徴と構成要素
表75 心不全に対する疾病管理の推奨とエビデンスレベル
表74 心不全患者,家族および介護者に対する治療および生活に関する教育・支援内容
1.1多職種チームによる疾病管理プログラム 1.2疾病管理プログラムの具体的な内容
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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