全細胞外液量は体内ナトリウム量により規定されており,慢性心不全では減塩によるナトリウム制限が重要である.ACCF/AHAの心不全ガイドライン
(2013)ではステージCあるいはDの患者では1日3 g未満とし,ESCのガイドライン(2016)では1日6 gを超える塩分過剰は避けるよう推奨されているが7,
14),日本人の食生活の現状を考慮し,本ガイドラインにおける慢性心不全患者の減塩目標を1日6 g未満とする.重症心不全ではより厳格な塩分制限を
検討する.患者教育における減塩指導では,患者手帳や減塩食に関する教材を活用する.高齢者においては過度の減塩が食欲を低下させ栄養不良の
原因となるため,適宜調節が必要である.
軽症の慢性心不全では自由水の排泄は損なわれておらず水分制限は不要であるが,口渇により過剰な水分摂取をしていることがあるので注意を要す
る.重症心不全で希釈性低ナトリウム血症をきたした場合には水分制限が必要となる.一方で,高齢患者では,加齢とともに口喝中枢の機能が低下す
ることを考慮し,適切な飲水に対する支援が必要である.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)