心不全では交感神経活動が亢進している.その原因の1つとして圧受容体(頚動脈洞・大動脈弓)の異常が考えられている.つまり,心不全では
圧受容体の感受性が低下し,交感神経の亢進に対しての抑制が減弱している.一方,心房や肺静脈壁からの交感神経求心路を介して交感神経
が亢進している.また,心不全では血管運動中枢自体の活性も亢進している.肺や腎のうっ血が生じるとノルアドレリンのクリアランスが低下し,
結果的に血中のノルアドレナリンが増加する.このような交感神経の亢進は,急性心不全時には重要な代償機転として働くが,亢進が慢性化する
と心臓の負荷を増大し,不整脈誘発や直接的心筋障害をきたし心機能を悪化させる.血漿ノルアドレナリン濃度は全身の交感神経指標であり,
生命予後の指標となる53).心不全ではとくに心臓交感神経活性の評価が重要であり,この評価の方法としてノルアドレナリンのアナログを用いたメ
タヨードベンジルグアニジン(metaiodobenzylguanidine;MIBG)シンチがある54).
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)