急性心不全を呈すると,左室拡張末期圧や左房圧の上昇に伴う肺静脈のうっ血,および/または右房圧の上昇に伴う体静脈のうっ血,さらには心
拍出量減少に伴う症状が認められる.フラミンガム研究における心不全の診断基準は左心不全,右心不全,低心拍出の症状・所見が混在したもの
であり(表10)51),これらを分けて考えることが患者の病態把握に有用である(表11).両心不全の患者においては左心不全の症状・所見および右
心不全の症状・所見の両者を呈する.
心不全の自覚症状から重症度を示す分類にはNYHA心機能分類がある.NYHA心機能分類は症状に応じてI度からIV度に分類しており,一方,
ACCF/AHAのガイドラインでは7),心不全のリスクはあるが症状がない状態(ステージA)から,安静時にも症状がある治療抵抗性の状態
(ステージD)までステージ分類をしている(II. 総論 1. 定義・分類 表8 7) [p. 13]および本章8.1 NYHA心機能分類[p.30]参照).両者の概念
は厳密には異なるものであるが,おおむね表8 7)のように対応する.
表8 心不全ステージ分類とNYHA 心機能分類の対比
NYHA心機能分類とはニューヨーク心臓協会(New York Heart
Association)が作成し,身体活動による自覚症状の程度により心疾
患の重症度を分類したもので,心不全における重症度分類として広く
用いられている.II度はさらにIIs度:身体活動に軽度制限のある場合,
IIm度:身体活動に中等度制限のある場合に分類される.
(Yancy CW, et al. 2013 7)より改変)
2つ以上の大基準,もしくは1つの大基準と2つ以上の小基準を満た
す場合に心不全と診断する.
(Mckee PA, et al. 1971 51) より改変)
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)