ACE阻害薬236, 238, 569),β 遮断薬250- 252, 570, 571)は心不全患者の長期予後を改善し,単独ないし併用療法が第一選択である.ACE阻害薬に忍容性
がない場合は,ARBの投与も可能である213, 242, 243).β 遮断薬は少量から開始し,忍容性を確認しながら漸増する.降圧が不十分な場合や臓器うっ
血を伴う心不全では利尿薬が併用され,重症例においては標準治療にMRAを追加することでさらなる予後改善効果も期待される208, 209, 247).
アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬(angiotensin receptor neprilysin inhibitor; ARNI,LCZ696)は,ACE阻害薬(エナラプリル)に対する優
越性が示され572),欧米ではすでに標準治療の代替療法としての有用性を期待されてガイドラインに収載されており14, 573),わが国でも承認へ向けた治
験が進行中である.カルシウム拮抗薬は,長時間作用型のジヒドロピリジン系は心不全の予後を増悪させず安全に使用できるが287),その他の陰性変
力作用を有するカルシウム拮抗薬の使用は避けるべきである.また,心不全患者のみを対象とした試験ではないが,心血管疾患リスクを有する高血圧
患者に対するα遮断薬には心不全の予防効果は認められていない574).
表38 高血圧を合併したHFrEF に対する薬物療法の推奨とエビデンスレベル
*長時間作用型のジヒドロピリジン系以外は陰性変力作用のため使用
を避けるべきである.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)