心血管病を有する高血圧患者は高リスク群に分類され,生活習慣の修正(塩分制限を含めた食生活の改善,運動,肥満者に対する減量,アルコー
ル摂取量の適正化など)と同時に,ただちに降圧薬治療を開始することが推奨されている197).しかし,心不全はその病因や病態が多岐にわたるため,
高血圧を合併する心不全患者の降圧目標値に関する明確なエビデンスは存在しない.そのため,心血管リスクと密接に関連する糖尿病や慢性腎臓病
(CKD),冠動脈疾患などの併存疾患ごとに示されている降圧目標値を目安とし,それぞれの患者の病態に応じた適切な降圧治療を実施するのが現
状では妥当であろう.そのなかで,降圧目標値をめぐっては従来議論が多く566, 567),一概に降圧目標値を設定することは困難であるが,米国では収縮
期血圧110~130 mmHgでの管理が支持されていることから568),わが国においても同様の数値を降圧目標値とする.なお,SPRINT試験196)において
は,140 mmHg未満を目標とする通常治療群とくらべて,120 mmHgを目標とする厳格治療群で心不全を含む複合心血管イベントの発症が有意に低
下した.しかし,同試験では糖尿病や脳卒中,明らかな心不全症例などが除外されている点,米国で行われた試験である点,厳格治療群において低
血圧や失神,電解質異常,急性腎障害などの有害事象が有意に増加した点から,この結果をそのままわが国に応用できるかどうかはさらなる議論が
必要である.
6.2治療
6.2.1 高血圧を合併したHFrEF(表38) 6.2.2高血圧を合併したHFpEF (表39) 6.2.3 急性心不全
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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