もっとも頻度の高い症状であり,肺うっ血による要因を解除するために利尿薬,血管拡張薬が投与されるが,末期心不全においては,血圧低下や腎機
能障害などさまざまな要因により症状の緩和がしばしば困難である.このような治療抵抗性の呼吸困難に対しては,少量のモルヒネなどオピオイドの有
効性ならびに安全性が報告されている899, 900).オピオイドは呼吸困難だけでなく疼痛や不安に対しても緩和効果が認められ,とくに頻呼吸の患者に対し
て有効である.ただし,嘔気・嘔吐,便秘などの副作用や,高齢者ならびに腎機能障害患者における過量投与には十分な注意が必要であり,少量から
開始して症状の経過を見ながら適宜増量を行う.呼吸抑制もまれではあるが副作用として生じる可能性があり,呼吸状態が不安定な終末期患者におい
ては,呼吸回数や呼吸パターンの変化を慎重に観察する.不安感など精神的要素の関与が強い場合にはベンゾジアゼピン系抗不安薬の投与を考慮す
るが,オピオイドに比較して効果は限定的である.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)