CS 1に相当する病態である.起座呼吸を示し,SpO2 が90%未満であることが多い.volume central shiftが主体であるため,呼吸管理と血管拡張に
よる肺うっ血の解除が必要である.NPPVが症状軽減と動脈血の酸素化,血行動態の改善に効果的である(表53).静脈ルートを確保する前にNPPV
や硝酸薬舌下またはスプレーを使用し,迅速に呼吸困難および酸素化の改善を図る.それでも肺水腫の改善が不十分である場合は,急激な血圧低下
に注意して血管拡張薬の持続静注を行う.利尿薬は体液貯留のある患者に限って投与する.
CS 1 のなかでも約半数がLVEF低下例であり710),治療経過中に低心拍出に陥るリスクがあることは周知しておく必要がある.低心拍出に対してはド
ブタミンによる心拍出量増加を図るが,末梢血管抵抗高値の例にはホスホエステラーゼ(PDE)III阻害薬の投与あるいはドブタミンとの併用が有用である
ことがある(表56).いずれも低用量から開始し適宜用量調整を行う.強心薬は血行動態の安定化に有用であるが,入院期間の短縮や生命予後の改善
をもたらすものではない.強心薬を投与しても循環動態が維持できない患者は増量するよりも大動脈内バルーンポンプ(IABP)などの補助循環管理を行
う(表56).モルヒネは患者の呼吸困難を改善し,肺うっ血を解除するために有用であるが,予後悪化に関連する可能性を示唆する報告もあり711),
急激な低血圧,呼吸抑制,アシドーシス進行に注意する.
表53 急性心不全患者に対する酸素投与,呼吸管理の
推奨とエビデンスレベル
ACSに関しては,ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライ
ン(2013年改訂版)715)および非ST上昇型急性冠症候群の診療に関す
るガイドライン(2012年改訂版)716)に準ずる.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)