1項目以上該当
異常項目(+)
病的所見(+)
病的所見(+)
病的所見(-)
該当項目なし
CT・MRI・核医学検査
運動/薬剤負荷試験・心臓カテーテル検査
原因疾患,心不全ステージに応じた治療
必要に応じて心不全の発症予防または経過観察
心エコー図検査(負荷心エコー図検査含む)
NT-proBNP≧400 pg/mLまたは
BNP≧100 pg/mL*
症状
労作時息切れ,起座呼吸,発作性夜間呼吸困難など
既往・患者背景
高血圧,糖尿病,冠動脈疾患の既往
心毒性のある薬剤使用歴
放射線治療歴,利尿薬使用歴
心疾患の家族歴(遺伝性疾患など)
心不全を疑わせる患者
心不全の可能性
心不全の可能性は高くない
心不全の確定診断
1
2
身体所見
(パルスオキシメータ含む)
ラ音,下腿浮腫,心雑音,過剰心音(Ⅲ音,Ⅳ音),
頚静脈怒張など
心電図
胸部X線
3
4
5
異常項目/病的所見(-)だが虚血性心疾患の疑いが残る
1.診断(アルゴリズム)(図4)
 心不全の診断では,自覚症状,既往歴,家族歴,身体所見,心電図,胸部X線をまず検討する.

 次に行うべき検査は,血中BNP/N末端プロBNP(N-terminal pro-brain natriuretic peptide; NT-proBNP)値の測定である.診断のためのカットオフの参
考値は図4に示すが43),軽度の心不全患者や高度肥満を有する心不全患者などではこの値を下回ることもある.したがってBNP 35~40 pg/mLあるいは
NT-proBNP 125 pg/mL以上の値を認め,症状,既往・患者背景,身体所見,心電図や胸部X線などから心不全の可能性が強く疑われる場合も,
心エコー法を行うことは妥当である.総合的に評価し,追加検査の要否を判断すべきである.身体所見で弁膜症を疑わせる心雑音が聴取される場合や,
明らかに陳旧性心筋梗塞を示す心電図異常を認める場合などは,BNP/NTproBNPの値にかかわらず心エコー法を行う.

 安静時の心エコー図所見と自覚症状に乖離がある場合は,負荷心エコー法の実施も考慮する.心エコー図で原因疾患の診断に至らない場合などは,
コンピュータ断層撮影(computed tomography; CT),磁気共鳴像(magnetic resonance imaging; MRI),核医学検査など他のモダリティーを用いる.
なお,虚血性心疾患患者において主訴が労作時息切れのみの場合があり,虚血性心疾患を否定しえない場合は運動負荷や薬剤負荷を用いて心筋虚
血評価を行う.

 心不全と確定したら,原因疾患および心不全ステージに応じた心不全治療を行う.
図4 慢性心不全の診断フローチャート
* NT-proBNPが125~400 pg/mLあるいはBNPが35ないし40~100 pg/mL
の場合,軽度の心不全の可能性を否定しえない.NT-proBNP/BNPの値のみ
で機械的に判断するのではなく,NT-proBNP/BNPの標準値は加齢,腎機能
障害,貧血に伴い上昇し,肥満があると低下することなどを念頭に入れて,
症状,既往・患者背景,身体所見,心電図,胸部X線の所見とともに総合的に
勘案して,心エコー図検査の必要性を判断するべきである.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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