NPPVによっても呼吸状態や動脈血液ガスの改善が認められない患者,あるいは意識障害,咳反射や喀痰排出困難な患者に対しては,気管挿管によ
る人工呼吸管理が適応となる(表60).
肺うっ血もしくは肺水腫を伴う急性非代償性心不全の患者には,とくに禁忌事項がないかぎり,末梢組織への酸素運搬が最大となるよう2~10 cmH2O
程度の PEEPをかけて管理を行う.基本的な換気条件としては1回換気量10~15 mL/kg,呼吸数10~20回/分(PaCO2 30~40 mmHgを目標),吸気:
呼気比1~1.5:2とし,動脈血液ガス分析結果を見ながら調節する.挿管直後は吸入酸素濃度(fraction of inspiratory oxygen; FiO2)1.0 から始め,
PaO280 mmHg以上に維持されるようFiO2 を設定する.酸素障害予防のためにFiO2 は0.5以下にすることが望ましい.
NPPV の一般的適応条件
① 意識があり,協力的である
② 気道が確保できている
③ 喀痰の排出ができる
④ 顔面の外傷がない
⑤ マスクをつけることが可能
NPPV 禁忌事項
① ドレナージされていない気胸がある
② 嘔吐,腸管の閉塞,活動性消化管出血がある
③ 大量の気道分泌物がある
④ 誤嚥の危険性が高い
NPPV から気管挿管への移行基準
① 患者の病態が悪化
② 動脈血ガス分圧が改善しない,または悪化
③ 気胸,痰の滞留,鼻梁のびらんなどのあらたな症状,または
合併症の出現
④ 症状が軽減しない
⑤ 意識レベルの悪化
表60 急性心不全に対するNPPV の適応・禁忌・気管挿管への移行基準
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)