筋芽細胞シートは,重症心不全に対する細胞治療の一種であり,6×10 7個の筋芽細胞からなる一枚のシートを,左側方開胸にて5枚,左室前壁から側
壁の広範囲の心外膜に移植する治療である.移植した筋芽細胞シートより肝細胞増殖因子,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor;
VEGF),塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor; bFGF),stromal derived factor-1などのサイトカインが分泌され,同サイトカイン
による血管新生,幹細胞誘導,線維化抑制などの作用により,心機能の改善が期待される592).これまでの心不全動物を用いた基礎研究では,心機能
の改善,生命予後の延長効果が認められている.
左室補助人工心臓を装着した拡張型心筋症患者4人に対して自己筋芽細胞シートを移植した報告では,2人の患者において心機能の改善が確認さ
れ,同患者は人工心臓より離脱した593).また,虚血性心筋症においては,臨床研究594),多施設共同企業治験595)を経て,同治療法の安全性および有
効性が確認され,同治療法は早期承認制度のもとに世界初の心不全に対する再生医療等製品「ハートシート®」として保険償還された.
また,小児・成人の拡張型心筋症に対しても医師主導型治験が行われている.
6.ヒト(自己)骨格筋由来細胞シート(ハートシート® )
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)