omecamtiv mecarbilは,ミオシンとアクチンの強固な結合の割合を増加することにより心筋収縮力を増強するため587),細胞内カルシウム増加を伴わ
ず,生命予後悪化をもたらすことなく,心機能を高めることができると考えられている.

 HFrEF患者を対象とした第II相臨床試験では588),omecamtiv mecarbilの血中濃度に比例して左室駆出時間は延長し,一回拍出量は増加し,血漿濃
度の高い患者では左室収縮末期および拡張末期容積が減少した.一方,心拍数はわずかながら有意に減少し,高用量では心筋虚血が出現した症例も
あった.

 次に行われた臨床試験は多数例を対象としたランダム化比較試験ATOMIC-AHF 589)で,606人のLVEF 40%以下で呼吸困難の症状があり,利尿ペプ
チドが上昇している急性心不全患者を対象として,omecamtiv mecarbilが3段階に増量投与された.その結果,omecamtiv mecarbil群ではプラセボ群に
くらべ高用量群で呼吸困難が有意に改善したが,血漿トロポニンはomecamtiv mecarbil群で有意に上昇した.

 経口薬についての臨床試験も行われており,448人のHFrEFを対象としたCOSMIC-HF 590)では薬物動態を見ながら50 mgまで増量した群で20週目の
駆出時間がプラセボ群にくらべて延長し,心拍出量は増加,左室拡張末期径は短縮,心拍数は減少した.

 約8,000人のHFrEF患者を対象とし,心血管死亡または心不全イベントに対する効果を検証するための第III相試験,GALACTIC-HF が現在進行中であ
591)
4.omecamtiv mecarbil(心筋ミオシン活性化薬)
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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