高尿酸血症は心不全患者にしばしば認められる併存症である.血清尿酸値7.0 mg/dLを超えるものと定義され,性・年齢を問わない407).心不全患者の
血清尿酸値は健常者に比較し高い84).その機序として,尿酸の産生過剰と排泄低下の両面が考えられている.キサンチンオキシダーゼ(xanthine
oxidase; XO)は,尿酸産生過程の最終段階に関与する酵素であり,心筋細胞にもわずかにXOが存在する.心筋虚血や心不全では,XO活性が亢進し尿
酸産生が過剰となる.その一方,腎血流量・糸球体濾過量の減少により尿酸排泄が低下し,さらに心不全の治療に広く用いられるフロセミドやその他の
利尿薬が尿酸排泄を障害し,血清尿酸値の上昇を悪化させる.
心不全患者において血清尿酸値と予後との関連が示唆されており,心不全における尿酸の病態生理学的意義が注目されているが,その詳細について
は不明な点が多い.Ankerらは,112人の心不全患者において尿酸値と生命予後との関連を前向きに調べた81).その結果,血清尿酸値9.5mg/dL以上は
予後不良のマーカーとなりうると報告した.一方で,その後に行われたアロプリノールを用いた心不全患者への介入試験では,尿酸値は低下させたもの
の,予後改善に関しての有効な成績は得られなかった408).現在,フェブキソスタットやトピロキソスタットなどの新規尿酸生成抑制薬が心不全に及ぼす効
果についても研究が進められているが,現時点で高尿酸血症自体やその治療薬剤が心不全の病態や予後に影響を与えるのか否かについての決定的な
エビデンスはない(表42).
表42 心不全を伴う高尿酸血症の管理の推奨とエビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)