心房細動は心不全患者にもっとも多く併発する不整脈の
1つであり,心機能や血行動態に悪影響を及ぼし,さらに
心不全を悪化させることが知られている314).重症の慢性
心不全患者に併発する心房細動に対してβ遮断薬には予後
改善効果がないことが,メタ解析で明らかとなった.それ
に加えて,洞調律でみられた心拍数低下に依存して予後が
改善する効果は,心房細動症例では認められなかった315).
しかし,急性期では心房細動に伴う急激な血行動態の悪
化や自覚症状の増悪,またはそれが予想される場合には,
適切な治療介入が必要と考えられる.心房細動自体の治
療としては,心房細動を容認して心拍数コントロールを行
う「心拍数調節療法(レートコントール)」と,洞調律に復
帰させ維持を目指す「洞調律維持療法(リズムコントロー
ル)」とに分けられる.心房細動が血行動態に与える影響
は急性心不全と慢性心不全とで異なるため,それぞれの病
態に応じた治療法を選択する必要がある.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)