2 遺伝カウンセリングの体制
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①遺伝カウンセリングの構成

 遺伝カウンセリングは,疾患の診療経験の豊富な専門医と遺伝カウンセリングに習熟した者が,チームとなって行うことが推奨される.遺伝カウンセリングに習熟し
た者とは,臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー,あるいはそれと同様な資質を有する者のことである.臨床遺伝専門医が当該疾患の診療経験に乏しい場合は,
必ず当該疾患の専門医と連携して相互に連絡を取り合いながら行う必要がある.遺伝カウンセリングは,クライエントが心理的にリラックスできる環境で行うことが望ま
しい.一般の診察室で行う場合は,外部の物音が気になるような環境は避け,人の往来が見えないような配慮も必要である.

②検査前遺伝カウンセリングが必要な場合

 遺伝学的検査を行う場合には,検査をオーダーする医師(この場合,多くは主治医であり循環器を専門とする医師と想定される)は,検査の意義等について十分に
説明し,インフォームド・コンセントを得てから行う必要がある.検査前に遺伝カウンセリングをすることは必須ではないが,インフォームド・コンセントを取得する過程で,
被検者から希望があれば検査前遺伝カウンセリングの機会を提供する.

③検査結果の診断への活用と遺伝カウンセリングの必要性

 疾患の診断を目的とした遺伝学的検査においては,遺伝学的検査の結果は,臨床診断の判断材料の1つとなる.遺伝学的検査のみで診断が行われることはない.
主治医は,被験者に対しては,検査の結果を一連の診断プロセスの流れの中でわかりやすく説明する必要がある.本人の診断に続き,家族に波及する問題(家族の
保因者診断等)がある場合は,遺伝カウンセリングの機会を提供する.

④記録等の管理

 遺伝学的検査の結果については,チーム医療の観点から原則として,一般の診療録に記載することを原則とする.しかし,個人情報保護の観点から,遺伝カウンセ
リングの内容に関する記録は,一般の診療録とは切り離して別に保管する等の慎重な対応が必要である.特に,電子カルテを採用している医療施設においては,遺
伝関連の個人情報が漏洩されることのないように十分に配慮する必要がある.

 遺伝カウンセリングは,基本的には自由診療の中で行われる.例外的に,保険診療の範囲内で実施可能な遺伝カウンセリングは,以下の条件を満たす場合に限ら
れる(2011年5 月現在).

(1 )以下の15疾患について,遺伝子疾患の検査を行った場合に考慮される.保険点数は4,000点である.なお,疾患によっては,遺伝子疾患の検査に,DNAシーク
 エンス法,PCR法だけでなく,酵素活性測定法が含まれる.
   対象15疾患:デュシェンヌ型筋ジストロフィー,ベッカー型筋ジストロフィー,福山型筋ジストロフィー,栄養障害型表皮水疱症,家族性アミロイドーシス,先天性QT
   延長症候群,脊髄性筋委縮症,中枢神経白質形成異常症,ムコ多糖症Ⅰ型,ムコ多糖症Ⅱ型,ゴーシェ病,ファブリ病,ポンペ病,ハンチントン舞踏病,球脊髄
   性筋委縮症.
(2 )上記15疾患について遺伝子疾患の検査を実施し,その結果について患者またはその家族に対し遺伝カウンセリングを行った場合には,患者1 人につき月1回
 に限り500点が加算される.
心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関する
ガイドライン(2011年改訂版)

Guidelines for Genetic Test and Genetic Councelling in Cardiovascular Disease(JCS 2011)
 
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