VAD治療のアルゴリズム(図13)とVADによる治療戦略822) (表68)をまとめた.急性心筋梗塞や劇症型心筋炎などによる急性発症の心原性ショック
に対して,PCPSや循環補助用心内留置型ポンプカテーテル(図13 では経皮的VADと記載)で治療が不十分であるとき,または離脱困難である場合,
次の治療ステップを判断するまで血行動態を維持する目的で,体外設置型VADを用いる治療をbridge to decision( BTD)とよぶ.この場合,前述した体
外循環用遠心ポンプを用いた左心バイパスを施行することもある.一定期間のVAD補助や左心バイパス後,心機能が改善することでデバイスからの離脱
が可能となることもあるが,そのような目的でVAD植込みを行うことをbridge to recovery( BTR)とよぶ.一定期間の循環補助と最適化された薬物治療に
よっても左心機能の改善が得られないものの,一方で移植登録が完了した場合に植込型LVADに付け替えることをbridge to bridge( BTB)とよぶ.
慢性心不全の急性増悪時に他臓器障害などを合併していて移植適応の決定が即座に行えない場合もLVAD治療を行うことがある.血行動態安定後,
移植適応となれば登録するが,このように他臓器障害の改善を期待してLVAD治療を前倒しで行うことをbridge to candidacy( BTC)とよぶ.現在わが国
における大部分のBTCは体外設置型VADを念頭に置いているが,profile 2における植込型LVAD治療事後検証システムはBTCの一種といえる.一方,
欧米でのBTCはほとんど植込型LVADによるものである.適合するドナーが出現して心臓移植に至るまで安定した血行動態で待機するための橋渡し治療
をbridge to transplan(t BTT)とよぶ.わが国においては植込型LVADの適応は現在BTTに限定されている.悪性腫瘍の既往や高齢などが原因で移植適
応基準に合致しない場合でも,恒久的な植込型LVAD治療を行うことがあり,destination therapy( DT)とよばれる.DTはとくに米国で積極的に行われて
おり823),最近わが国でも導入が検討されている824).
図13 重症心不全におけるVAD 治療のアルゴリズム
BSC:best supportive care
注)主として収縮不全による重症心不全を想定しており,標準治療は本ガイドラインを参照して実施する.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)