最近では経皮的に挿入が可能なpercutaneous VADもいくつか登場しており,その1つは上述した循環補助用心内留置型ポンプカテーテルであるが,
開胸を要する(surgical)VADについてはポンプが体外に露出しているか,体内に植え込まれているかで,体外設置型と植込型に分類される.

 わが国で現在使用可能な体外設置型VADは拍動流ポンプを,植込型VADは非拍動流(連続流)ポンプを採用している.VADによる外科的左室補助は,
左室心尖部から脱血を行い,駆動ポンプによって上行(ときに下行)大動脈に送血を行う.このシステムを左心補助人工心臓(LVAD)とよぶ.体外設置型
VADによる右室補助も可能で,右房または右室から脱血し,肺動脈に送血を行う.このシステムは右心補助装置(RVAD)とよばれる.植込型RVADシステ
ムは今のところ保険償還されたものはない.体外設置型VADと植込型LVADにはその特性上大きな違いがある.ポンプを体外に設置しているため,
体外設置型VADはわが国においては院内使用限定であり,長期補助の場合は患者のQOLが著しく損なわれる.また,送脱血管刺入部の感染症,
ポンプ内血栓による塞栓症,高いINRの維持による出血などの合併症が重篤になりやすく,ポンプ故障による交換も多い.一方で植込型LVADはQOLと合
併症の点で優れるものの,現在わが国においては保険償還上は心臓移植適応患者に限定されている.
2.3.2 VADの種類と特徴
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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