1.心不全の治療目標
(図1)
22)
 本ガイドラインでは,心不全の発症・進展を4 つのステージに分類しているが,ステージAとBは明らかに心不全ではなく,心不全発症リスクのステー
ジである.このような心不全発症前のリスクであるステージにおける治療を,心不全の治療ガイドラインにあえて含めるのは,その予防がきわめて重
要であるからにほかならない.本ステージ分類は2005年のACC/AHAガイドラインで初めて提唱されたものに準拠しているが,このコンセプトの重要性
は,10年以上経過した現在においても,またわが国においても変わらない.

 各ステージにおける治療目標はステージの進行を抑制することにある.すなわち,ステージA(リスクステージ)では心不全の原因となる器質的心疾
患の発症予防,ステージB(器質的心疾患ステージ)では器質的心疾患の進展抑制と心不全の発症予防,そしてステージC(心不全ステージ)では予
後の改善と症状を軽減することを目標とする.ステージD(治療抵抗性心不全ステージ)における治療目標は,基本的にはステージCと同様であるが,
終末期心不全では症状の軽減が主たる目標となる.このような治療目標を達成するためにステージごとに治療を実施する(II. 総論1. 定義・分類 図
1 22)[ p. 12])
心不全リスク(突然死)
器質的心疾患発症
ステージ A
器質的心疾患のないリスクステージ
急性心不全
慢性心不全
時間経過ステージ B
器質的心疾患のあるリスクステージ
ステージ C
心不全ステージ
ステージ D
治療抵抗性
心不全ステージ
心不全症候出現
心不全治療抵抗性
症候性心不全身体機能
高血圧
糖尿病
動脈硬化性疾患 など
虚血性心疾患
左室リモデリング(左室肥大・駆出率低下)
無症候性弁膜症 など
治療目標
・危険因子あり・器質的心疾患なし・心不全症候なし・器質的心疾患あり・心不全症候なし・危険因子のコントロール・器質的心疾患の発症予防・
器質的心疾患の進展予防
・心不全の発症予防・症状コントロール・QOL改善・入院予防・死亡回避
・緩和ケア・再入院予防・終末期ケア・器質的心疾患あり・心不全症候あり(既往も含む)
・治療抵抗性( 難治性・末期)心不全慢性心不全の急性増悪(急性心不全)反復
心不全発症心不全の難治化心不全とそのリスク
心不全の進展イベント
心不全ステージ分類 7)
図1 心不全とそのリスクの進展ステージ
(厚生労働省.2017 22)より改変)
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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