ステージ C
心不全ステージ
HFrEF HFpEF
疾病管理
HFmrEF
治療薬の見直し
補助人工心臓
心臓移植
緩和ケア
・器質的心疾患あり
・心不全症候あり
(既往も含む)
ステージ D
治療抵抗性
心不全ステージ
・治療抵抗性
( 難治性・末期)
心不全
ステージ分類治療内容
個々の病態に
応じて判断
ACE阻害薬/ARB
+β遮断薬
+MRA
利尿薬
必要に応じて
ジギタリス
血管拡張薬
ICD/CRT
運動療法
利尿薬
併存症に
対する治療
2.心不全治療のアルゴリズム
(図10)
 心不全の経過は多くの場合,慢性・進行性である.大多数の心不全は急性心不全として発症するが,代償化され慢性心不全(ステージC 心不全ス
テージ)に移行する.その後は慢性に進行するが,急性増悪により非代償性急性心不全を反復しやすい.急性増悪を反復することにより徐々に重症化
していく.さらに経過中に突然死をきたすこともある.このように心不全はステージCからステージD(治療抵抗性心不全ステージ)へと直線的に増悪す
る経過をとるのではなく,かつそのような経過の予測がきわめて困難であることが重要な点である(II. 総論 1. 定義・分類 図1 22)[p. 12])
このような心不全の経過は悪性腫瘍のそれとは大きく異なる.標準治療に対する反応が乏しく増悪を反復するようになると,ステージDへと進展する.
さらに,ステージCからDにおける経過は,原因となる基礎心疾患の重症度や併存症により個人差が大きく,一様ではない.このことは,心不全の経過
の予測をさらに困難なものにしている.

 ステージCにおける治療には,慢性心不全治療と急性増悪時における急性心不全の両方が含まれる.心不全患者の多くはステージCであり,
症候が改善してもステージCにとどまるため,急性期から慢性期治療への移行が重要である.ステージCにおける治療はLVEFの低下した心不全
(HFrEF)とLVEFの保たれた心不全(HFpEF)に応じて選択する(図10).LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)の治療については研究が不十分
であり,現時点では個々の病態に応じて判断する.心不全患者の多くで症状の改善には利尿薬が必要であるが,生命予後を改善するという明らかな
エビデンスがなく,臓器うっ血に応じて用量を調整することが重要である.ステージCにおける治療を十分に行っても安静時に高度な症状を認め,
増悪による入院を反復する状況になるとステージDとしての治療を選択する.
心不全リスク(突然死)
器質的心疾患発症
ステージ A
器質的心疾患のないリスクステージ
急性心不全
慢性心不全
時間経過ステージ B
器質的心疾患のあるリスクステージ
ステージ C
心不全ステージ
ステージ D
治療抵抗性
心不全ステージ
心不全症候出現
心不全治療抵抗性
症候性心不全身体機能
高血圧
糖尿病
動脈硬化性疾患 など
虚血性心疾患
左室リモデリング(左室肥大・駆出率低下)
無症候性弁膜症 など
治療目標
・危険因子あり・器質的心疾患なし・心不全症候なし・器質的心疾患あり・心不全症候なし・危険因子のコントロール・器質的心疾患の発症予防・
器質的心疾患の進展予防
・心不全の発症予防・症状コントロール・QOL改善・入院予防・死亡回避
・緩和ケア・再入院予防・終末期ケア・器質的心疾患あり・心不全症候あり(既往も含む)
・治療抵抗性( 難治性・末期)心不全慢性心不全の急性増悪(急性心不全)反復
心不全発症心不全の難治化心不全とそのリスク
心不全の進展イベント
心不全ステージ分類 7)
図1 心不全とそのリスクの進展ステージ
(厚生労働省.2017 22)より改変)
図10 心不全治療アルゴリズム
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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