推奨
クラス
エビデンス
レベル
Minds
推奨
グレード
Minds
エビデンス
分類
以下の両方を満たす患者
① 器質的心疾患に伴う心不全
患者
② 持続性心室頻拍,心室細動,
心臓突然死からの蘇生例
I A A I
以下のいずれかを満たす患者
① 慢性疾患による身体機能制限
② 余命が1 年以上期待できな
い例
1.1突然死の二次予防
(表27)
 心不全に伴う持続性心室頻拍,心室細動,心臓突然死からの蘇生例は,不整脈再発の高リスク例であり,とくに器質的心疾患を有する場合,
2年間の再発率は10~20%と報告されている326).突然死予防として,アミオダロンを中心とした抗不整脈薬の投与,手術療法,カテーテルアブレー
ションなどがあるが327-341),植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)と薬物の効果を比較した大規模試験の結果では,
器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍,心室細動患者に対し,ICDは抗不整脈薬よりも生命予後を改善させた342-344).器質的心疾患に伴う持続性心
室頻拍,心室細動例を対象として,AVID 342),CASH 343),CIDS 344)の各臨床試験が行われた.ICDの予後改善効果を統計的に証明できたのは
AVIDのみであるが,いずれにおいても器質的心疾患の種類にかかわらず,ICDは薬物治療に比して予後を改善させる傾向を示した.

 AVID,CASH,CIDSをまとめたメタ解析では,アミオダロンと比較してICDは死亡率を有意に低下させ,6年間で27%の相対死亡率の低下が示され
345).AVID,CASH,CIDSでは70~80%の患者が冠動脈疾患を有しており,ICDが冠動脈疾患に伴う致死的不整脈に高い二次予防効果を示すこと
は明らかである342-344).とくにLVEF≦35%の心不全患者において,より高い効果が期待できる14, 345, 346)

 急性冠症候群の急性期(発症48時間以内)に出現する持続性心室頻拍や心室細動は,虚血の解除やその後の不整脈基質の安定化により再発の
可能性は低く,必ずしもICDの適応とならない347).心筋梗塞発症から48時間後以降に出現する持続性心室頻拍や心室細動はその後も再発する危険
性があり,ICDの適応について考察されるべきである14, 346, 347).一方,非虚血性拡張型心筋症に伴う心不全患者での突然死二次予防に関するデー
タは少ない.AVID,CIDSの非虚血性拡張型心筋症256人のメタ解析の結果では,ICDにより31%の死亡率改善が認められたものの,統計学的な有
意差を認めなかった(P=0.22)348).症例数が少ないことが影響していると考えられるが,これまでの前向きの臨床試験において,ICDは抗不整脈薬
よりも高い生命予後改善効果を示すことが認めてられおり,その効果は冠動脈疾患例と同等であると考えられる342-344)

 カテーテルアブレーションは血行動態的に不安定な心室頻拍や心室細動に対しても行われるようになったが349),根治性に限界があり,たとえ手技
に成功したと判断されても原則としてICDの適用が考慮されるべきである.
表27 ICD による突然死二次予防の推奨とエビデンスレベル
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
次へ