心不全患者の再入院の主な要因として,1)管理不十分によるうっ血(体液貯留)の増悪,2)感染・腎不全・貧血・糖尿病・COPDなどの非心臓性併存疾患
(noncardiac comorbidities),3)薬物治療および非薬物治療に対するアドヒアランス不良(nonadherence)872),が指摘されており,さらに高齢心不全患者の
長期予後の規定因子としてサルコペニア・フレイル14)があげられている.したがって,再入院リスクの高い高齢・多臓器併存疾患保有心不全患者では,
退院後に外来や在宅で,「QOL向上・運動耐容能向上」と「再入院防止・要介護化防止」を目指して,併存疾患を含めた全身的な疾病管理(disease
management)とサルコペニア・フレイルを予防する運動介入が必要である873).
これまでに心不全に対する多職種介入プログラム・疾病管理プログラムの有効性が多数報告され874),システマティック・レビュー875)において多職種介入が
心不全患者の再入院と総死亡率を有意に減少させることが示されているが,未解決の課題として,1)多職種介入という点で共通であってもプログラム内容が
標準化されていない876, 877),2)心不全の自覚症状やQOLに深く関連する運動耐容能低下への介入(=運動療法) が必ずしも組み込まれていない878),3)
欧米と医療体制が異なるわが国で実施する場合に最適なチーム構成,介入時期,介入場所などが未確立である,4)医療システムとして長期継続するため
のコスト・ベネフィットの検討が不十分878),があげられる.AHAステートメント879)でも,セルフケアへの患者アドヒアランスを高めることは容易ではないことと,
セルフケア指導を医療システムのどこで実行するかが未解決であることを認めている.これに対し,心不全患者が定期的に多職種チームによる観察・指導を
受ける外来心臓リハビリテーション(以下,外来心リハ)が,セルフケア・生活習慣改善指導を受ける理想的な場であると認識されつつある880).
包括的外来心リハプログラムでは,再発予防のための生活指導や心不全病態のモニタリングも行われるので,心不全疾患管理プログラムとしての役割を
期待できる.Davidsonら881)は,入院した心不全患者を対象とする前向き無作為割り付け試験により,外来心リハ介入(週1回の監視下運動療法,心不全専
門看護師による心不全評価,多職種による教育指導・在宅運動療法指導・電話相談)を3ヵ月間実施した結果,外来心リハ介入群は通常治療群にくらべ,
QOLと6分間歩行距離の改善に加え,1年後の心不全重症度の軽減と再入院率の減少が得られたと報告し,外来心リハプログラムが運動耐容能改善,QOL
改善,心不全重症化・再入院防止を実現する心不全疾病管理プログラムとして有用であることを示した.
2.1疾病管理プログラムとしての外来心臓リハビリテーションの意義
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)