うっ血所見
 起座呼吸
 頚静脈圧の上昇
 浮腫
 腹水
 肝頚静脈逆流
低灌流所見
 小さい脈圧
 四肢冷感
 傾眠傾向
 低Na血症
 腎機能悪化
低灌流所見の有無なしありうっ血所見の有無なし
dry-warm
A wet-warm
B dry-cold L wet-cold
C
(L/分/m2)
(mmHg)
2.2
18
0
肺動脈楔入圧
正常
乏血性ショックを含む
(hypovolemic shock)
心原性ショックを含む
(cardiogenic shock)
心係数
1.3心不全の分類
 重症度を示す指標として血行動態指標によるForrester分類がある(図2)24).このForrester分類は急性心筋梗塞における急性心不全の予後を予測
する目的で作成された分類であり,病型の進行に伴い死亡率が増加することが示されている.臓器灌流とうっ血を客観的指標で評価するこの
Forrester分類は,虚血以外の心不全の病態把握にも有用であるが,観血的測定を前提に作成されたものであり,侵襲度が高い.また,加齢に伴い
低下する心係数について年齢補正がされておらず,さらに肺動脈圧・肺血管抵抗などの指標は含まれていないため,慢性心不全患者の重症度分類
を行う際,その解釈には注意を要する.

 そのため,身体所見からより簡便に病態を評価するために最近頻用されている分類がNohria-Stevenson分類であり,末梢循環および肺聴診所見に
基づいた心不全患者のリスクプロファイルとして優れている(図3)25).Profile AからLまで4分類したところ,短期間での死亡例(心臓移植を含む)
はProfile CとBに多かった.

 同様に,急性非代償性心不全の初期治療導入の指標に頻用されているのがクリニカルシナリオ(clinical scenario;CS)分類である 26)X. 急性心
不全 1. 定義・分類・疫学 表48[p. 75]参照).CS分類は循環器専門医以外の医師が救急外来での初期対応導入を迅速に行えるように作成され
たものである.現在までのところ,明確なエビデンスが確立されているものではないが,急性心不全患者の初期収縮期血圧を参考に,その病態を把
握してすみやかに治療を開始するアプローチ法を提案したものであり,今後検証が待たれる.注意点として,血圧値のみから治療方針を決定してはな
らないこと,初期治療導入後には病態を再評価し,適切な二次治療に移行する必要があることがあげられる.
図2 Forrester 分類
(Forrester JS, et al. 1976 24)より 作図 )
図3 Nohria-Stevenson 分類
(Nohria A, et al. 2003 25)より改変)
Profile A:うっ血や低灌流所見なし(dry-warm)
Profile B:うっ血所見はあるが低灌流所見なし(wet-warm)
Profile C:うっ血および低灌流所見を認める(wet-cold)
Profile L低灌流所見を認めるがうっ血所見はない(dry-cold)



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急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)