ivabradineは洞結節細胞のIf チャネルを阻害することにより心拍数を低下させる薬剤である.洞調律の患者のみが対象となる.ivabradineは,推奨量あ
るいは最大投与量のβ遮断薬とACE阻害薬(あるいはARB),MRAを投与されてもLVEFが35%未満,洞調律で安静時心拍数が70拍/分以上,過去1年
以内に心不全入院の既往があるLVEFの低下した心不全(HFrEF)患者において,プラセボにくらべて死亡と心不全入院を有意に減少させた913)
この試験から明らかになったことは,洞調律のHFrEF患者では心拍数の増加がリスクであり,それを低下させること自体が治療ターゲットになるということ
である256).現在,わが国でivabradineは市販されていないが,同様のHFrEF患者を対象としたivabradineの第II相臨床試験が行われ,2.5 mgあるいは
5 mgの安全性と有意な心拍数低下効果が証明された914).現在,死亡と心不全入院をエンドポイントとした臨床試験(J-SHIFT)が進行中である.
欧州におけるivabradineの適応はLVEFが35%以下の有症候性(NYHA心機能分類II ~ III度)のHFrEF患者で,最大用量あるいは患者が許容できる最
大量のβ遮断薬を用い,さらにACE阻害薬(またはARB),MRAなどの適切な薬物治療を行っても安静時心拍数が洞調律で70拍/分未満にならない患者
とされている.
1.ivabradine(Ifチャネル阻害薬)
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
次へ