侵襲的肺動脈圧モニタリングが心不全の管理に有効であるか否かに関しては,確立したエビデンスは得られていない158).急性呼吸窮迫症候群
(acute respiratory distress syndrome; ARDS)や循環不全を呈する患者で,他の臨床的評価から心拍出量,左室拡張末期圧,血管内ボリューム
の評価が困難なとき,侵襲的肺動脈圧モニタリングが積極的に推奨される(推奨クラス I, エビデンスレベルC)158- 160).尿量,身体所見,
心エコー図などの非侵襲的データに基づきながら標準的治療を行っても心不全症状が改善しない患者では,1)体液貯留,心拍出量,全血管抵抗,
肺動脈血管抵抗が不確かな場合,2)収縮期血圧が低く初期治療に反応しない場合,3)腎機能が増悪する場合,4)非経口の血管作動薬を必要とす
る場合,5)機械的補助循環装置や心移植の検討が必要な場合においては,侵襲的肺動脈圧モニタリングによる血行動態の管理がすすめられる
(推奨クラス IIa, エビデンスレベルC)158- 160).一方,利尿薬や血管拡張薬に良好に反応する正常血圧の急性非代償性心不全患者では,ルーチンの
侵襲的血行動態モニタリングは推奨されない(推奨クラス III, エビデンスレベルB)158- 160).最近,埋込型圧センサーによる無線肺動脈圧モニタリング
が開発されており,この無線モニタリングを用いた心不全治療群では,対照群に比し,心不全患者の入院率が33%低下したと報告されている161)
7.1右心カテーテル法
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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