推奨
クラス
エビデンス
レベルMinds推奨グレードMinds
エビデンス
分類
在宅酸素療法
中等度* 以上のCSR-CSA
を伴うNYHA心機能分類III
度以上のHFrEF患者(LVEF
≦45%)に対する心機能お
よび自覚症状の改善を目的
酸素療法による動脈血酸素分圧(arterial partial pressure of oxygen; PaO2)の上昇は,中枢のCO2感受性の亢進を軽減し,動脈血二酸化炭素分圧
(arterial partial pressure of carbon dioxide; PaCO2)のゆらぎの振幅を低下させる.またPaO2 の上昇は換気努力を減少させ,分時換気量を低下させ
ることで,正常呼吸時のPaCO2 が上昇し,無呼吸閾値から乖離させる691).結果としてCSR-CSAは減少し,交感神経活動が抑制され,睡眠構築の改
善が認められる.夜間酸素療法の短期間の検討では,慢性心不全患者のCSR-CSAの消失,交感神経活性の抑制,運動耐容能の改善,血漿BNP濃
度の低下が報告されている692, 693)

 わが国において慢性心不全患者に対する酸素療法の効果を検証した多施設共同研究では,CSR-CSAを有するLVEF≦45%の慢性心不全患者
(NYHA心機能分類II ~III度)を酸素投与群と従来の薬物療法群に無作為に割付け3ヵ月間追跡した結果,酸素投与群でAHI が低下し,身体活動指数
で評価した自覚症状は有意に改善し,このことは1年間の比較臨床試験においても確認された694, 695).このような背景のもと,わが国では,酸素療法は
NYHA心機能分類III度以上の慢性心不全患者で,睡眠中にCSR呼吸が認められ,AHI が20以上あることがポリソムノグラフィで確認された患者に対し
て保険診療が認められている.一方で,最近わが国で行われたランダム化臨床試験では,3ヵ月間の夜間酸素療法ではASVにくらべてAHIの低下
は軽度であり,またLVEFの改善は有意ではなかった696)

 夜間酸素療法は,その簡便性から患者への負担が少なくコンプライアンスも良好であるが,慢性肺疾患や高度肥満例ではPaCO2が上昇し意識障害
を引き起こすことがまれにあるため,その流量の調節については慎重な判断と病態の理解が必要である.
12.2.4 酸素療法
(表47)
表47 SDB 合併心不全に対する在宅酸素療法の推奨とエビデンスレベル
中等度はAHI≧15 と定義されることが一般的であるが,わが国の
保険適用レベルはAHI≧20である.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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