睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing; SDB)は睡眠中に発生する呼吸障害の総称で,その主要な病態は睡眠時無呼吸(sleep apnea)であ
る.睡眠時無呼吸は,10秒以上の気流停止を無呼吸(apnea),気流の低下が10秒以上継続し低酸素または微小覚醒を伴う状態を低呼吸
(hypopnea)として,1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index; AHI)が5以上(つまり無呼吸ないし低呼
吸が1時間あたり5回以上)のものをいう.睡眠時無呼吸には大きく分けて上気道閉塞に起因する閉塞型睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;
OSA)と呼吸中枢からの呼吸ドライブの消失による中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea; CSA)の2 つのタイプがある.一般住民にみられる睡
眠時無呼吸のほとんどはOSAで,過度の日中の眠気をはじめとするさまざまな症状を伴う場合には閉塞型睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep
apnea syndrome; OSAS)とよぶ.一方,中枢性無呼吸は一般住民にはまれで,多くは心不全や中枢神経疾患などに伴って起きる.心不全に合併す
る場合は,昼間にもみられる周期的な呼吸の変動であるチェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration; CSR)となることが多く,CSR-CSA
(central sleep apnea with Cheyne-Stokes respiration)とよばれる.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)