OSAあるいはCSR-CSAはいずれも心不全に高率に合併するが,それぞれのタイプの無呼吸が心不全の発症・進展に及ぼす影響は異なる.
OSAは無呼吸に伴う低酸素血症,交感神経活性の亢進,胸腔内陰圧による左室後負荷増大,内皮機能障害,酸化ストレス,炎症,凝固機能の亢進,
さらには肥満,インスリン抵抗性などのさまざまな機序を介して血管機能障害,冠動脈プラークの破綻,心筋障害,不整脈などを惹起し,致死的,
非致死的イベントへと導き664- 666),心不全の発症リスクも高まり667),心不全の危険因子と位置づけられる.一方,CSR-CSAは心不全の結果として起き
るもので,心不全に伴う肺うっ血から肺迷走神経刺激を介して起きる過呼吸の結果もたらされるCO2分圧の低下に対する過剰な呼吸抑制によって起こ
り664, 668),循環時間の延長による情報伝達の遅れがその発生を助長する.さらに,心不全患者におけるOSAとCSAに対する共通の増悪因子として夜
間の吻側への体液シフトがある669).心不全患者では体液貯留が起こるが,昼間の活動時には立位をとることにより下肢に主に過剰な体液が蓄積され
る.しかし,夜間に患者が臥位をとることにより下肢から上半身への体液シフトが起こり,上気道の浮腫による気道の狭小化をもたらし,OSAを増悪し,
肺うっ血を増強しCSAも悪化する.
12.1.2 SDB が心不全の発症・進展に及ぼす影響
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)