急性心不全症例において,わが国ではカルペリチドの使用頻度が高い.カルペリチドの腎保護効果は開心術における腎保護,造影剤腎症の予防など
において認められる628, 629).急性心不全症例において,画一的に腎保護効果を示すか否かは結論が出ていない630).バソプレシンV2受容体拮抗薬で
あるトルバプタンが新規利尿薬として広く使用されるようになっている.

 EVERESTのサブ解析631)では,腎機能低下患者で腎機能悪化・血圧低下をきたさずに安全に使用できるとされており,少数例の研究ではあるが
eGFR 15~60 mL/分/1.73m2のCKDステージ3~4の症例でフロセミドの使用量が減らせたとの報告もある632)

 また,腎血流増加を認めるドパミンをはじめとする点滴強心薬が使用されることも実臨床では見受けられるが,心不全症例でドパミンの腎保護作用は
確認されておらず,現時点で明らかに腎保護効果が証明された点滴薬剤はない633).急性期に薬剤で十分な利尿と血行動態の改善,自覚症状の改善
が得られない患者では血液浄化療法を考慮する.
8.2.6 主に急性心不全,急性増悪時に使用される薬剤
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急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)