心不全症例では腎機能低下を合併していることが多く,急性心不全・慢性心不全ともに腎機能低下がもっとも重要な予後規定因子となっている616)
また, CKD症例においても心不全を含む心血管イベントがもっとも頻度の高い死亡原因である.このように,心臓病と腎臓病は密接な関係にあり,
心腎連関(cardio-renal syndrome)の重要性が強調されている.CKD症例の治療は,主にレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を含めた降圧加療
であり,心不全を合併した場合でもCKD自体の治療が変わるとは思われないが,心不全症例の治療においては,腎機能の臨床的指標である推算糸球
体濾過値(eGFR)を加味して治療戦略を立てることが望まれる.

 なお,CKDは蛋白尿や腎臓の形態変化,あるいはeGFRが60 mL/分/1.73m2未満のいずれかが3ヵ月以上持続することで診断する.蛋白尿などに言
及した心不全の大規模臨床研究は乏しく,本ガイドラインではeGFR値に沿ったCKDステージに合わせて各薬剤を評価する.eGFR 60mL/分/1.73m2
未満の症例は,ステージ3;eGFR 30~59mL/分/1.73m2,ステージ4;eGFR 15~29 mL/分/1.73m2,ステージ5;eGFR<15 mL/分/1.73m2に分類さ
れる.
8.1病態
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)
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