心不全治療でエビデンスが確立しているACE阻害薬,ARB,β 遮断薬の効果を,糖尿病を合併する心不全症例のみを対象として評価した臨床試験
はいまだ報告されていないが,ACE阻害薬やARBを用いた大規模試験のサブ解析では,糖尿病の有無にかかわらず同等の効果が報告されている49,
242, 245).β遮断薬に関しても,糖尿病の有無にかかわらず同等の効果が期待される590, 591).一方で,β 遮断薬は糖代謝への悪影響や低血糖症状をマ
スクすると危惧されたこともあるが,同薬がもつ死亡率低下効果を考慮すると,糖尿病合併の症候性慢性心不全の治療においてβ遮断薬を中止すべき
ではない592).また,β遮断薬が糖代謝に及ぼす影響はすべてのβ遮断薬で同等ではなく,高血圧患者におけるカルベジロールとメトプロロール酒石酸
塩の比較では,カルベジロール投与群においてインスリン抵抗性が改善し,微量アルブミン尿も減少した593).さらに,MRAも糖尿病の有無にかかわら
ず心不全への有効性が認められている209, 594).
以上より,糖尿病合併例での心不全治療は,糖尿病非合併例と同様である.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure
(JCS 2017/JHFS 2017)